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木を組む話123




■木の欠点を補う
木を組む場合、どうしても家の隅の部分にはちょっとした細工が必要になります。
隅の部分は力が外に逃げやすいところですし木が割れやすい小口の部分が使われるとこにもなります。この部分の加工は木の繊維に対し垂直にならないよう扇状にホゾや渡りあごを加工します。そうすれば木の繊維を傷めずに木を組むことが出来ます。(この他にも木を組む方法によっては良い加工法もありますよ。)

■大きな木を使うには大きな木に適した加工が必要
家に大きな窓や広い空間(間取り)が誰でも欲しいですよね。もちろん私も家を造るときにはそんな家を造りたいと思います。
しかし大きな開口部や広い間取りにはそれなりの太い木で骨組みを造らなければならないということは想像がつきますよね。しかしここで注意が必要になります。ただ単純に木の太さだけでなく、太い木を骨組みに組み込むにはそれなりの加工法が必要になります。
通し柱と胴差しの接合部分の仕口の写真を見てみてください。
胴差に使う木には上部と下部に「エリ輪」が付いています。この「エリ輪」は家の傾きや狂いを最小限に抑える工夫なのです。さてこの「エリ輪」の意味を解説しましょう。
木は長さの寸法(年輪と垂直方向)よりも幅の寸法(年輪方向)の方が伸縮の割合が大きいということを先にも言いましたが、大きな材料になれば小さな材料よりも大きく伸縮をすることになります。仮に「エリ輪」が無い材料の場合5mm木が縮んだとすると、5mmの変形があるわけですが、「エリ輪」があるとこうなります。木は外側の白色の身の部分で伸縮する訳ですから、その外側(上部と下部)に「エリ輪」が付いているので5mm木が縮んでも、両側でバランスよく縮みに対応するので実際には2.5mmの変形で抑えることが出来るのです。
木の家は生きています。変形が大きければ木に与えるストレスが大きくなります。大きな材料を使えば丈夫な家が出来る訳ではありません。大きな木にはそれなりの加工を施す。私たちは先代たちから教えられました。

■木を活かす
家の小屋組(屋根裏)には一昔前は野物(丸太)がよく使われていました。何故だか知っていますか?
木は丸太の状態が一番変形しないからです。山で木は育つときに風に耐え周りの木との生存競争をしているうちに癖がついてきます。その木を加工をすると癖の悪い木は反ったりするのですが、丸太は山で育ったまま使う訳ですから、癖を利用して組み込むことができるのです。
また木の繊維も傷めないので比較的細い材料でも構造的に十分耐えることもできます。
最近では施工性の良さというのが最優先になっている事もあって、あまり見かけなくなりました。
そんな繊細な丸太の状態を家の骨組みに組み込むには技術をもった大工職人でなければ出来ません。しいては、長い寿命の家を造る技のひとつです。

■木の家の骨組みの大きな違い
ここまで木を組む事を書いてきましたが、最近では最もポピュラーなプレカット構法(工場加工構法)と木組構法(少し昔の構法)の違いを説明します。

まず天端揃えの骨組みをみてください。こちらが最近主流の木造の家の骨組みです。
横向きで使われる梁材は天端がそろっているため蟻継ぎで接続されています。先の継手でも解説しましたが、蟻継ぎは引っ張りやねじれ、横からの力にも弱いので金物などの補強をして強度を保つようにします。「金物があれば大丈?」時が経つにつれて木は伸縮を繰り返しいずれボルトなど金物は緩むことも大いに考えられます。
一方天端が揃わない木組の構法では水平に交わる梁材の高さが違うため、木の断面を傷めることが少ないうえ強い組み手を付けることが出来るという利点があります。
骨組みの図(下)のように現在私たちの地域では木組の構法とはいえ二階梁の部分で天端を揃えることは少なくなりましたが、【木を活かす】で解説をしたような小屋組(屋根裏の骨組み)の部分では木組の技術を活した家をつくっています。家の基礎はしっかりとしていても、頭(小屋組み)部分のバランスがよくなければなりませんよね。金物に頼るのではなくまずは木を組むことで強い骨組みを造る。木の家の基本だと考えます。

■木の癖を組む
木はなかなか人間のいうことを聞いてくれません。
工業製品のように均等でもなければ癖もあります。木は自然素材ですから当たり前の話です。
そこで不揃いの木を頑丈に組みあげるにはどのようにすればよいのでしょうか?答えは簡単です。木のいうことを人間が聞いてあげればいいのです。一本一本の性格を見て木がストレスを感じないように、また木の癖を私たちが利用してやればいいのです。
簡単な解説をしてみましょう。「桁」「胴差」「柱」は家の内側に反るように組み込みます。木は圧縮方向に強いという性格もありますし、仕口の強度も落とさずに済みますからこの利点を利用し欠点を補いながら「梁」を組み込めばいいのです。
木の短所を長所に変えることで精度、強度、耐久性の高い家は出来上がります。

■木組の家とは
木組の家の技術論を解説してきましたが、本当の木組の家はただ単純に木を組むだけでは出来上がりません。
腕のいい大工が造ったとしても出来上がらないものです。
「木組」とは癖を上手に組み合わせることから始まり、家造りにたずさわる色々な工事の職人たちの心とその家にこれから暮す建主さんの「木心」が組みあがって出来るものです。
「永い寿命の木組の家」は「木」という素材に惚れた人たちの気持ちを組み上げることで出来上がるものだと私たち大工は思っています。